■触覚とアート・ワークショップ・シリーズ
美術は視覚のみで感じるものでしょうか。 「触覚とアート」シリーズでは視覚優先の現代社会の中にあって、触覚による世界の探索、また、作品の鑑賞などの意義をそれぞれの分野の専門家の方々とトークによって深めていきます。また、造形ワークショップでは触覚を生かしたアート作品の制作に取り組みます。
<触覚を探検するワークショップ&トーク>
視覚に障害のある研究者である広瀬さんは、さわることで点、線、面、立体へとイメージを広げ、そして、宇宙の広がりを求めようとしています。いっぽう、山極さんはゴリラなど類人猿の調査研究から視覚偏重になった人間がもっと触覚を含む感覚を総動員した身体の直感力が必要だと説きます。異なる分野の専門家が触覚を通した文化、社会、文明について語ります。
講師:広瀬浩二郎(国立民俗学博物館准教授)
自称「座頭市流フィールドワーカー」。13歳の時に失明。京都大学大学院にて文学博士号取得。専門は日本宗教学、触文化論。2001年より国立民族学博物館に勤務。「ユニバーサル・ミュージアム」(誰もが楽しめる博物館)の実践的研究に取り組み、“さわる”をテーマとする各種イベントを全国で企画・実施している。『目に見えない世界を歩く』『それでも僕たちは「濃厚接触」を続ける!』など、著書多数。
講師:山極壽一(総合地球環境学研究所所長)
日本モンキーセンター、京都大学霊長類研究所、京都大学理学部学部長を経て京都大学総長(第26代)、一般社団法人国立大学協会会長、日本学術会議会長などを歴任。ゴリラ研究の世界的権威であり、霊長類学者・人類学者として現代文明への批評を展開。『「サル化」する人間社会』、『ゴリラからの警告「人間社会ここがおかしい」』など著書多数。
<さわって体験するワークショップ&トーク>
視覚に障害のあるアーティストで常に新しい世界を感じさせる作品を創作し続ける光島氏と、美術を知り尽くし、アール・ブリュットにも造詣の深い保坂氏。光島さんの体験に基づくワークショップののち、現代美術における視覚障害者のある人とない人の作品やつくることを媒介としたコミュニケーションの在り方についてお二人のクリエイティブなトークを展開します。
講師:光島貴之(美術家・鍼灸師)
10歳の頃に失明。大谷大学文学部哲学科卒業後、鍼灸を生業としながら、1992年から粘土による造形活動、続いてラインテープとカッティングシートを用いた「さわる絵画」の制作を始める。2012年より布や金属などの素材を取り入れた「触覚コラージュ」という新たな表現法を探求。2020年、「アトリエみつしま」を開業し、新しいアプローチの実践拠点となることを目指し活動の幅を広げている。
講師:保坂健二朗(滋賀県立美術館ディレクター(館長))
慶應義塾大学大学院修士課程(美学美術史学)修了。東京国立近代美術館主任研究員を経て2021年より現職。フランシス・ベーコンを中心とした20世紀以降の絵画における人物表現、アール・ブリュットの歴史などを研究テーマとする。担当した主な展覧会に、「フランシス・ベーコン」(2013)、主な著書に「アール・ブリュット アート 日本」(監修、平凡社、2013)など。